おしえて!ノースくん&サウスくん 第5話:「売れるCMってどうやってつくるの?」

今回はノースくんとサウスくんが、「売れるCMのつくりかた」をおしえてくれるみたいだよ!

登場人物

おねえさん:ノースくんとサウスくんを居候させているやさしい女性。広告のことはあまり詳しくないけれど、アイスクリームのことはすごく詳しい。

ノースくん:尖り気味のイッカク。極寒の北極海生まれ汐留育ちのクリエーティブ・ディレクター。好きな飲み物はクラフトビールで、好きな恐竜はトリケラトプス。

サウスくん:大きな身体の雪男。南極のクレバス生まれ汐留育ちのマーケティング・ディレクター。好きなものは麻婆豆腐で、最近はスキューバダイビングも気になっているらしい。

あーーーー!その技ずるいって!

へへへ。おねえさんもまだまだだね。

サウスくんの性格がよく出てるよ。

あーまた負けちゃった。もっと手加減してよ!

手加減したら、それはそれで怒るくせに。

勝ったら勝ったで怒るんだよね。人間ってよくわからないね。

ぎくっ……! そういえば新しいお悩みがきてたなー!

「ノースくん、サウスくん、おねえさん、はじめまして。僕はWEB制作会社に勤める25歳のクリエーティブディレクターです。いまは主にWEB広告用のクリエーティブを担当しているんですが、いつか広告代理店に転職して有名な企業のCMなどを手がけたいと思っています。しかしCM制作の裏側をよく知らないので必要なスキルなどがイメージできません。どうやって商品が売れるCMをつくっているのでしょうか。教えてください」

なるほどー。たしかにCM制作の裏側ってどうやって作っているのか興味あるなー。しかも「商品が売れるCM」ってなるとなおさらイメージできないかも。ノースくん答えてくれるかな?

そもそも、「商品が売れないCM」ってのはないんじゃないかなと思うよ。

そもそも、みんな商品が売れる広告をつくっているはずだよね。よほど大失敗しない限り。

君たちほんっと「そもそも」が好きだよねー!じゃあ、その売れるCMってどんなCMなのか教えてよ。

「売れる」といっても、そのCMを見た消費者がその商品を買いに行くだけがCMの役割じゃないんだ。たとえばペットボトルのドリンクのCMは「コンビニの棚の取り合い」をしてる。

棚の取り合い?どういうこと?

コンビニの棚の良い位置に置かれないとなかなか買われない。だから「良いCMやってたくさん買いに来るから、棚にバッチリ置いてね」って小売店舗に向けたメッセージだったりもするんだよ。。あと高級外車なんかは、今乗っている人に対してCMを流してる。

え? 新しく買う人じゃなくて今乗ってる人に向けてCM流すなんて意味あるの?

「あなたが乗っているその車はこんなにも特別でかっこいいんですよ!」というメッセージをCMで伝えて、ユーザの満足度をどんどん上げていく。そうするとその人は買い替えのタイミングでもう一度購入する可能性が上がる。それって新しい顧客を獲得するより簡単なんだよ。

つまりすべての広告は最終的には商品を売るために存在していて、アプローチの仕方に色んな方法があるというだけのことなんだね。

なるほどね〜。でも、どうせCMつくるなら話題になるような面白いCMをつくるほうがいいんでしょう?

僕は「面白いCM」をつくりたいとは思ってない。より効果が出る、つまり「より売れるCM」をつくりたいと思ってるよ。もちろん、例えばお菓子の広告とか「面白いCM」を作ることでより売れるなら、全力で面白い企画を考える。

ノースくんあまのじゃくだからなあ〜なんか想像できるよ。

でもこういう考え方のクリエイターはレアで、昔から同業者に理解されずに苦労したよね。周りの仲間はいかに「面白いCM」をつくるか考えてたから。

じゃあノースくんはどんな風にCMをつくっているの?

例えば、某ゲーム機のCMをつくるときは、ゲーム屋さんに行って子どもが店内で放映されているゲーム画面を食い入るようにして見ている姿を観察しまくったんだよ。

ちょっとした不審者……(笑)

顧客観察と言ってあげて。

「子どもたちはゲームのどういうところが好きなんだろう?」っていう子どもたちの反応するポイントをとことん研究したんだ。そのポイントをふまえてCMをつくったら、ちゃんとゲームの売り上げが上がったんだよ。

えーすごい!でも、そりゃそうだよね。

でも当時は同期や先輩から「ノースのつくるCMって、結果は出てるのかも知れないけどつまんないよな」って言われたりして。すごく葛藤していたね。悔しいな〜って。

子どもにとっては「ここがポイントなんだよ!」ってのが、クリエイター視線では理解できないってことか。

それは先輩たちのかっこ悪い負け惜しみだね!!!

業界で生き残っていくためには「売れるCM」より「面白いCM」なのかな?とかたくさん悩んだな。そうやって悶々としているときに、ユーモアのあるCMで有名な製薬会社の広告をつくっている大先輩から言われたんだ。「殺虫剤のような日常の消費財のCMと、子どもがお小遣いを全額投入して買うゲームのCMのクリエーティブが同じなわけがない。それでいいんだよ」って。

それは理解のある人だねえ。

あれは、すくわれたねぇ。その言葉をきっかけに、自分のやり方はこれでよかったんだと自信を持つようになったんだ。

今のノースくんのやり方が確立された瞬間だね

だね。それ以来、なんだかゲームのキャラクターたちがタレントに見えてきてね。CMの中で使うゲーム映像はクライアントさんからもらう映像素材を使うのではなく、自分たちでつくろう!と。めちゃくちゃゲーム上手いスタッフと実際に何百回もゲームをやり込んで「そこで振り向け!」「もっと派手に動け!」とか、ゲーム内のキャラクターに演技指導をしはじめたね。

ゲームのキャラに演技指導!

最高の映像を届けたいからね!でもさ、たくさんキャラクターが出てくるゲームとかめちゃくちゃ大変なんだよ。なんせ演技指導が同時に8人分とかあるからね。主役のキャラクターは予定通りうまく動いてるのに、奥のほうで余計な爆発が起こっていて「何やってんだよ〜!」みたいな。2秒のカットを撮るためによく徹夜したなぁ……。

はたから見たら大人たちがゲームで遊んでるようにしか見えないだろうけどね(笑)。

実際、なんだかんだ楽しかったけどね。そして、そんな風にCMをつくったら、結果としてやっぱり売れたんだ!ゲームのプレイ画面を中心の構成で、CMとしては面白味はないかも知れないけれど。

面白くはないけれど、商品がちゃんと売れるCM、かあ。

CMの本質ってそこかもしれないね。

ノースくんはCM制作の仕事をする上で決めてるルールってなにかある?

あるよ。

どんなの?

1個はね、最終的には折れようと思ってる。

ずいぶんリアルな話だな(笑)。

自分はこっちが正しいと思っていても、自分の意見を提案して議論をした結果、最終的にクライアントさんが「違う」と言うんだったら折れようと思ってるよ。「降りる!」みたいなことはやらずに「わかりました」って折れて、そっちの方向でのベストを尽くしたいって思ってるよ。

あれ、ノースくんけっこう大人な感覚も持ってるんじゃない。尖ってるだけだと思ってたからなんか人間くさくて安心しちゃった。

人間くさいというか僕はイッカクだけどね。あともう1つはCMという映像表現の中で、極力ウソをつきたくないというか、なるべくホントのことを伝えたいと思うよ。「便利~!」とか「美味しい~!」みたいなのはやっぱりやりたくないんだよ。「ホントに?」って思っちゃう。

CMってそんなもんかなとも思うけどね。

まぁ、そうなんだけどさ。でも、それじゃ言っても言わなくても同じってことだよね。

ビールのCMでよくある「ゴクゴク、美味い!」みたいなのってやっぱりちょっとわざとらしいよね。

ね。「ゴクゴク」ってあんな音、出る?ゴクの回数まで決まってるんだよ。日常でなかなか「ぷはあ!」とかも言わないよね。しかもよく見ると飲む直前でカット割ってて、飲んでなかったり。あとさ・・・

めっちゃ言うじゃん。

でもなー、あれはあれである種、伝統芸能的な世界でもあるから、いざ、担当してクライアントさんに言われたら、やるんだろうなあ。その制限の中でのあたらしい表現方法を考えてみたいかなぁ。

この葛藤はCMをつくる人たちみんな持ってそうだね。リアリティは追求したいけど、過剰にやらないと伝わらない、みたいな。

そうなんだよねー。芸人さんたちって、カメラの前でどうやったら「おいしい」のか計算してるじゃない?ここでリアクションすべきだな、とか、ここでうまいこと言ったほうがいいな、とか。

撮影中も「おもしれー!」とか「すげー!」ってわざとらしく叫ぶ芸人さん多いよね。

そうそう。でも編集でそういうのは絶対にカット(笑)。

えー!かわいそう!

だって「おもしろそう!」とか「すごい!」は見ている人に感じて欲しいことだから。

なるほど、そういうことね。

用意されたセリフっぽいものじゃなくて、その人の素の部分が出てきたり、その人なりのリアクションが出ているところを極力使いたい。もちろんこっちもそれが出やすいように仕向けていく演出をするけどね。あとは、ポロッと本音を出しがちなタレントをキャスティングするようにしたりね。

とにかく、ノースくんは真面目で正直なクリエーティブディレクターなんだね。見直しちゃった。

クリエーティブというとなんだか面白いものや変わったものをつくるイメージがあるけど、ノースくんみたいに実直なスタイルのほうがビジネスにインパクトを与えるクリエーティブなのかもね。

……なんだか2人にそうやって褒められると照れ臭いな。

いや、ノースくんは本当に立派なクリエーティブディレクターだと思うよ。ねえ、サウスくん。そういえばアイス食べたくなっちゃったね。

うん。なんかアイスが食べたいねおねえさん。

え?褒めるのもう終わり?もうちょっと余韻にひたらせてよぉ。

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