おしえて!ノースくん&サウスくん 第4話:「ブランドってなに?それおいしいの?」

今回はノースくんとサウスくんが、「ブランド」の正体をおしえてくれるみたいだよ!

登場人物

おねえさん:ノースくんとサウスくんを居候させているやさしい女性。広告のことはあまり詳しくないけれど、アイスクリームのことはすごく詳しい。

ノースくん:尖り気味のイッカク。極寒の北極海生まれ汐留育ちのクリエーティブ・ディレクター。好きな飲み物はクラフトビールで、好きな恐竜はトリケラトプス。

サウスくん:大きな身体の雪男。南極のクレバス生まれ汐留育ちのマーケティング・ディレクター。好きなものは麻婆豆腐で、最近はスキューバダイビングも気になっているらしい。

おねえさん:あ、2人ともまたピーマン残してる。

だってあんまり好きじゃないんだよ、これ。

ちゃんと食べないと大きくなれないよ。

これ以上大きくなってもしょうがないし。

屁理屈言わないの!こないだお残ししないって約束したでしょう?

(話を変えて誤魔化そう……)お姉さん、その紙はなに?

あ、これ?そうそう、悩める読者さんからのFAXだよー!

「ノースくん、サウスくん、おねえさん、はじめまして。私は都内で小さなカフェを経営しています。最近、近くに学習塾ができたので、新たに学生向けのボリュームのあるメニューを作ろうとしたところ、従業員たちから”自分たちのカフェらしくないメニュー”と反対されてしまいました。私自身、経営者でありながら恥ずかしながら”自分たちらしさ”を意識したことがなかったので、これを機会に”ブランディング”について考えてみたいと思っています。そもそも、企業にとってブランドは必要なものなのでしょうか?」

なるほどー。ブランドを持つべきかどうかって話だね。これってどっちの領域?

僕もブランディングの作業は日々やっているけれど、ブランドを体系的に語るならサウスくんだね。

あいよっ!

そもそも「ブランド」ってなんなの?

まず、教科書的な意味合いで言うと「お客さんと企業の間にある約束」と僕は教えられて育ってきたかな、南極で。

企業側が一方的に発信するだけじゃなくて、お客さんがいて、その関係性の上にできるものだね。

「お客さんと企業の間にある約束」って具体的にはどういうこと?

豆知識:

「ブランド」という言葉の語源は、牛を放牧していた牧童が「他人の牛と自分の牛を区別するために」牛のわき腹に焼き印を押した(「burned」:焼き印を押す)ことが由来と言われています。見た目で区別がつきにくい牛を「識別」するためのもの。

例えば「このバイクに乗ってると自分がかっこいいと思える」とか「このカバンを持っているとちょっと自信がつくな」とか「このノートパソコンをカフェでターンッてやってると仕事してるわーって陶酔できる〜」とか……。企業の商品とお客さんとの間に関係性が生まれてるでしょ?これが「ブランド」。企業とお客さんの両方がいないと成立しないから、無人島ではブランディングはできない。

たしかに私も、お気に入りのブランド靴履いてるといつもより強気になって背筋がピンとのびるわ。

僕もさ、大好きなクラフトビールのメーカーがあるんだけど、そこのビールばかりを飲む理由には、味以上のものがあって、その約束を信頼しているよ。

でもさ、まさにそういった「約束」って破っちゃならない「縛り」にもなると思うんだけど、それでもブランドを持つメリットってあるの?

メリットは色々あるよ。まずは今や多くの商品がコモディティ化してきている。その中での差別化になる。

これは想像つきやすいよね。

豆知識

コモディティ化とは、競合商品と差異のない一般的な商品になること。コモディティ化が起こると、付加価値で差別化されていない為に、市場価格が主な比較対象となり低価格競争が余儀なくされる。コモディティ化を抜け出すためにもブランド戦略は重要。

他に大事なメリットは、ブランドによって生まれる「価格プレミアム」がある。例えば、おしゃれで都会的なイメージのあるカフェAと、どの駅前にもある安価で庶民的なカフェB。この2店のコーヒーの味は……実はそこまで変わらない。むしろ僕はBのコーヒーのほうが美味しいと思う。

ふむふむ。

でもカフェAのほうが2倍の値段で提供している。これは完全に「価格プレミアム」がブランドについているから。カフェAを好むお客さんはコーヒーの味にお金を払っているようで、実はそうではない。おしゃれな空間やそこにいる自分の姿、すなわちブランドにお金を払ってる。

豆知識

価格プレミアムとは、商品の価格のうち、ブランドの価値に対して上乗せされている分の価格のことである。言いかえると、顧客があるブランドに対して他の製品より余分に払ってもよいと考えている価格。

価格プレミアムと言えば車もめちゃくちゃわかりやすいよね。性能や材料費で考えるとそこまで大きな差はないはずだけど、高級車はプレミアムプライスがどっさり乗っている。

つまり、ブランドを確立することで通常より高いお金で物やサービスを売ることができるっていうメリットね。

そうだね。クリエーティブの側面で言うと、その価格プレミアムを維持するためにお金をかけてブランド広告を作ったりもする。

あとは、ブランドロイヤリティ、すなわち、消費者と末長い関係性を築けるっていうメリットもある。例えばある電化製品メーカーを一度気に入ったら、そのお客さんはよっぽどのことがない限りそのメーカーの商品を買い続ける。

僕はもう何十年もリンゴのマークのパソコンだし、気がつけば携帯もイヤフォンも時計も……

豆知識

ブランドロイヤリティ(ロイヤルティ)とは、他の代替ブランドがあるにも関わらず、ある特定のブランドを購入したいという顧客の愛着や忠誠心のこと。ブランドロイヤリティが高ければ、顧客は特定のブランドを何度も繰り返し購入します。

分かりやすい例だね。ブランドによる関係性の構築で、ノースくんは生涯を通してそのメーカーにお金を使い続けるわけだよね。

ブランドへの「愛着が金銭に変換」されてるってことだね。

ロイヤリティが高まれば、その人にはマーケティング宣伝費をかける必要すら減る。逆に、その人を別のブランドにひっくり返すスイッチングコストはものすごく高いと言える。

ブランド、大事!

そうだね。企業の、儲け続け生き永らえるという命題にとってブランドは重要だね。

化粧品なんかも同じブランドを使い続けてるなあ。実際、金額や中身は他のブランドでもそんなに変わらないって分かっていても。

そうだね!だから、はじめて使う化粧品のポジションを取れちゃったら超強いよね。

言われてみれば。

「ブランド」って聞くと高級なイメージだけど、安価なものや大衆的なものにも「ブランド」はあるよね?

もちろん!安さが人気の牛丼チェーン店にもブランドは存在しているね。ただ安いからではなく、安いのに美味しいことが企業と顧客の約束だな。こういうお店が5,000円のラーメンを売ってはいけない。それはブランドと違う動きになるからね。

なるほど〜!最初に言ってた「お客さんと企業の間にある約束」の意味がわかってきたぞ。

じゃあさ、牛丼チェーンで同じような値段で同じようなメニューの牛丼A店と牛丼B店の2店が並んでいたら、おねえさんはどうやって選ぶ?

あー!あるね。でも、理由なく結局いつも同じお店を選んじゃうなぁ。

でしょ?それもブランドの力だよ。極論したら同じ内容なのにどちらかのお店を選ぶっていうのは、心にきざまれてる「思い入れ」でしかないんだよ。

少しでも安いほうとか、美味しいほうとかっていう合理的な判断を超えて「好きだから」っていう非合理が起きるのがブランドのパワーだね。

その「非合理」を生み出させるのもマーケティングの仕事?

一般的にブランディングはマーケティングの1領域として含まれるね。でも個人的にはこれもやっぱり「経営」だと思うんだ。企業としての立ち居振る舞いの話だからね。

最近いいなって思った企業の立ち居振る舞いってなに?

最近すげーなと思ったブランディング・アクションは、某外資系の映像コンテンツ配信サービス企業が行なっている「解約メールの送付」。要するにさ、しばらくサービスを使ってないユーザーに対して「あなたうちのサービス全然使っていませんよね。解約しちゃいますけど、良いですか?」ってメールを送るの。

え?放っておけばボロ儲けなのに解約しちゃうの?

やばいっしょ?

好きになっちゃうよね。仮にその時は解約したとしても、絶対またいつか帰ってくるねって感じ。

うん。この話はビジネスサイドにいる人たちにとってはある意味、伝説になってるよね。こういう企業の姿勢には絶対的な信頼を感じるし、生涯に渡って利用してくれるファンが生まれる。だからやっぱり企業の活動としてブランディングをするのが本当は一番いいんだよね。

マーケティング・キャンペーンでブランドを築こうとするのはむずかしい。短期的で表層的になりがちなプロモーションとは役割がちがう。

我々がやっているような、企業のロゴを新しくしたり、ミッションやビジョンを策定する、いわゆるリブランディング作業は、そこから経営がブランディング活動をやっていくためのスタート地点作りだよね。

そうだね。そこに至るまでに経営陣と徹底的に話し込んで想いを汲み取って、ブランドの土台作りのお手伝いをしている意識だね。

我々のような外部の人間がファシリテートして、デザインや言語などの形に落とし込みながら、経営層が自社のブランディングを考えるのはとても良いことだと思うな。もちろん、それ以降の立ち居振る舞いすべてに影響してくるので、そういった意味ではとっても繊細な世界だよね。

お悩みFAXをくれたカフェのオーナーさんも、まずは「お客さんと企業の間にある約束」がなんなのかをじっくり考えてみるといいかもね!

今日もまた解決できたね。じゃあお風呂入ろうか!

ん?お残しのピーマンの件はどうなった?「おねえさんと2人の間にある約束」がまだ果たされてないのでは?

くそ、誤魔化せなかったか……

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