今回はノースくんとサウスくんが、どうやったら「クリエーティブディレクター」になれるのか?を、教えてくれるみたいだよ!
登場人物
おねえさん:ノースくんとサウスくんを居候させているやさしい女性。広告のことはあまり詳しくないけれど、アイスクリームのことはすごく詳しい。
ノースくん:尖り気味のイッカク。極寒の北極海生まれ汐留育ちのクリエーティブ・ディレクター。好きな飲み物はクラフトビールで、好きな恐竜はトリケラトプス。
サウスくん:大きな身体の雪男。南極のクレバス生まれ汐留育ちのマーケティング・ディレクター。好きなものは麻婆豆腐で、最近はスキューバダイビングも気になっているらしい。

目玉焼きにかけるのはしょうゆ派? ソース派?
しょうゆ派かな。
僕はソース派! おねえさんはどっち派?
ふふ、塩コショウかな〜。
ずるい。
そういえば今日も悩める読者さんからお手紙きてるよ!
ノースくん、サウスくん、おねえさん、はじめまして。私は大学3年生なんですが、広告代理店のクリエーティブ・ディレクターに憧れています。クリエーティブ・ディレクターになるにはどうしたら良いのでしょうか?クリエーティブ・ディレクターのノースくんに聞きたいです

クリエーティブ・ディレクターのなり方についての相談だね。ノースくんってさ、クリエーティブ・ディレクター歴は長いの?
たぶん相当長いほうだよ。新卒で広告代理店に入って、いろいろあって3年目くらいからクリエーティブ・ディレクターを名乗らせてもらってるから、もう20年近いよ。
20年!
ていうか新卒3年目でクリエーティブ・ディレクターとかあるの?
まぁ、いろいろあってね。
ちなみにクリエーティブ・ディレクターって何する仕事?
Wikipediaには<クリエーティブ・ディレクター(英: Creative Director)とは、コンセプトを開発し、アイデアを具現化するための指針を決定する責務を担い、各分野の専門スタッフを指揮する中心的な立場の人物である。略称はCD。>って書いてあるよ。
へー。
すっごいざっくり言えば、広告制作の責任者だね。
アイディアの最初の起点を考える人ってこと?
そこはもちろん大事な役割なんだけど、入り口部分だけじゃなくて、出口になるアウトプットの表現の詳細までの全部が責任範囲だね。
大変〜!で、ノースくんはどんなきっかけでクリエーティブ・ディレクターになったの?
おねえさん、クリエーティブ・ディレクターって言いにくいからCDでいいよ。
オッケー!CDね!
日本の広告代理店のオーソドックスな制作チームって、CD、コピーライター、アートディレクター、CMプランナーという4人構成なのね。CDは広告キャンペーン全体の方向性を決める役割で、このスペシャリストチームの舵取り役。クライアント企業さんの悩みは何で、それをどういう風に解決するのかを考えるというマクロな部分から、具体的なアウトプットの表現のミクロな部分までが守備範囲。はじめの研修でそう聞いた瞬間から「自分はCDになりたい!」って思ったの。
まめちしき
欧米の制作チームはCD、コピーライター、アート・ディレクターの3人構成が基本。CMプランナーは日本特有の職業。デジタル施策が当たり前の昨今では、海外でも日本でもテクノロジスト(テクニカル・ディレクター)がチームにいることも多い。
たしかに!CDって響き、なんかカッコよくって憧れちゃう!
だから新入社員の時「きみは我が社で何をやりたいんだね?」って聞かれて「CDになりたいです!」って答えたの。そしたらさ……「はぁ?なんだこいつ?」みたいな呆れ顔されちゃったのよ。
えっ、なんで!?
ははは。日本の広告代理店の場合「CD=部長」でもあるんだよな。
まめちしき
元来、日本の広告代理店においてはCD=部長=管理職という意味合いが強くある。クリエイターとは言っても大企業のサラリーマン。ある程度の年次がくるとCDに昇格し、職能というより役職の意味合いが強かった。最近は変わりつつあるらしい。
そうなの!CDって部下の管理をするマネジメント職と言うのが代理店の中の常識で。「CDになりたい!」ってことは、「早く部長に出世したい!」って思われちゃったのよ。
本来のCDの役割をしたいというのが通じなかったんだね。
当時はインターネット広告が出始めた頃で「統合キャンペーン」のような
コンセプトはなくて、CMや新聞広告1発で突破!って感じだったんだよ。だからプランナーやコピーライターの個が強ければ成立しちゃって、本来の意味でのCDの役割に目が向けられていなかったのかもしれないね。
まめちしき
2000年代までの広告キャンペーンと言えば圧倒的にテレビだった。媒体が少なく、テレビが共通の話題の中心だったからである。その後、パソコン、スマートフォン、SNSなどの登場で、人々の暮らしが変化するのに合わせ広告キャンペーンも変化している。統合的な1つのコミュニケーションコンセプトの下、クリエーティブの企画・表現は、媒体ごとの特性に応じたチューニングが必要だ。ここで大事なのが、根幹にある戦略でありコンセプト。これを決めるのがCDの役割。
そんな時代かぁ……。
こう見えてけっこう歳いってんのよ。
遠い目しないのっ!

その後も、ことあるごとに「部長って意味じゃなくて、本来の意味のCDになりたい」って注釈付きで言い続けたけどまったく理解されなかったねぇ。
部長って管理職だから、残業つかなくなるんだよね?
そう!それ!だからなるべくCDにはなりたくない!みたいな空気がみんなあった。
今や猫も杓子もCDみたいな感じあるけどな。
そこはノーコメント。
それでも結果的にクリエーティブ・ディレクターになったのはどんな経緯だったの?
話すと長くなるから経緯は省略するけど、めちゃくちゃ大きなクライアントさんを2年目から1人で担当することになっちゃったのよ。
やば。でも、クリエーティブは4人1組のチームで担当するんじゃないの?
うん、いろいろあったのよ。大変だったけど当時はホントがむしゃらに頑張ったよ。代理店のクリエーティブチームという意味では1人だけど、実際のCMを作る現場の制作チームは何十人もいて、自分のディレクションでその人たちみんなを率いなくちゃいけないと思うと、痺れたよねえ。
それって実質的にCDってことだよね?
うん。名刺の肩書きはコピーライターだけど。CDもコピーライターもCMプランナーも1人で兼業してた。自分でCDとして方向性決めて、自分で企画して、自分でジャッジして提案する。
マルチ!
そしたらある日、打ち合わせの中でその大きなクライアントさんの宣伝部長さんが「ノースくんは弊社の担当CDなんだから」って言ってくれたんだよね。稲妻が落ちたよ!僕はその日からクリエーティブ・ディレクターになったと思ってる。
おぉ!良い話。でも、意外とスルっとなれちゃうんだね。クリエーティブ・ディレクターに定義ってないの?
定義や資格はなくて、自称でもなれちゃうね。ただ、一般的にはCDは広告クリエーティブの何らかのスペシャリティが必要と言われてる。
うん。ノースくんは特殊パターンだけど、本来はコピーライターとかアートディレクターとかCMプランナーとかを10年とか長い年月やり込んで極めた人がなる職種なんだよな。
そうだね。だから、海外で広告業界の人に「Creative Directorです」と挨拶すると、一定の尊敬というか、一目おかれるよ。でも海外のCDってホントにCDらしいというか、みんな凄まじい競争を勝ち抜いて偉くなってきた人たちのオーラがビシビシあるのよ。自分の才能と広告賞をぶらさげて次々とエージェンシーを渡り歩いてる感じで。
へー!それはなんか日本のCDのイメージとはちょっとちがうね。
自分のことを棚にあげて言えば、優秀なチームや歴戦のスタッフを率いるんだから、場数というか経験値はあらかじめ絶対的に必要だよね。「あの、僕、CDの見習い中なんで」みたいなことは許されない。プロフェッショナルであるべき。
CDって今の時代にすごく重要な仕事なんじゃないかしら?って思えてきた。
CDの業務領域の拡張って言うのは僕がこの数年おいかけてる大きなテーマなんだけど、それ話してたら夜になるからまた別の機会に。
そうだねー。じゃあ今回の質問「どうしたらクリエーティブ・ディレクターになれるか」への回答をまとめると?
運と実力!あと度胸!
そして、とりあえず自ら名乗っちゃう!
うーん……いい話だったけどこれは参考にはならないよなあ…。
でも、ホントそんなもんなのよ。
あ、さようならの前にあれは言っておいた方がよいんじゃないの?
そうだね!僕は「クリエイティブ・ディレクター」じゃなくて「クリエーティブ・ディレクター」に、こだわりがあるの。(記事内読みにくかったらごめんなさい)
ん?どういうこと?
クリエ「イ」ティブか、クリエ「ー」ティブかの違い。
汐留方面出身の人の小さなこだわり。
どっちでもいいでーす!
はーい!
ごちそうさまでした〜。
